社会課題解決の現場で働く方々からお話を伺い、その内容をインタビュー記事として発信するWebメディア「ソーシャルウォーカー(Social Walker)」。市⺠活動やソーシャルビジネスに焦点を当て、事業内容や背景にある社会課題、行政だけでは課題が解決されない理由などを独自インタビューを基に発信しています。
第11回目は、「株式会社うむさんラボ」の取締役COOである山川 伸夫さんにお話を伺いました。
自然豊かな環境で、観光地としても国内外から人気の高い沖縄県。しかし、華やかな面がある一方で、住民の方々は沖縄県特有の様々な社会課題を抱え生活しています。株式会社うむさんラボでは、そうした状況をビジネスの力で解決し、「沖縄らしい幸せの経済と社会」の創出に取り組んでいます。
団体紹介
名称 | 株式会社うむさんラボ |
公式HP | https://umusunlab.co.jp/ |
事務所所在地 | 沖縄県浦添市内間4-5-25 |
問合せ先 | https://umusunlab.co.jp/contact |
事業内容 | ・企業や団体の育成と伴走支援 ・社会的インパクト投資 ・経営コンサルティングおよびバックオフィス業務サポート ・人材育成および就労サポート |
今回お話を伺った人
山川 伸夫(やまかわ のぶお)さん
「株式会社うむさんラボ」取締役COO
「一般社団法人Every Star Story」代表理事
■プロフィール
20代はインディーズバンドで全国的に活動(〜2005年)。その後、東京のIT企業で法務・総務・人事など管理業務を幅広く担当。2016年、大手複合機メーカーにて「働き方変革」を推進。
2017年にグロービス経営大学院を卒業後、株式会社レキサスにて経営管理・事業開発を担当。2018年創業の株式会社うむさんラボ創業メンバーで、2020年にはソーシャルビジネス「ゆいといろ」を立ち上げる。
――山川さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
山川さん:よろしくお願いします。
個々が補完し合う就労環境、様々な事業の創出で沖縄県の発展を図る
――はじめに、「株式会社うむさんラボ」の事業内容を教えていただけますか。
山川さん:沖縄県をより豊かにするための事業創出に取り組んでいます。主な事業内容は次の4つです。
・沖縄県内のスタートアップやソーシャルビジネスに取り組む企業や団体の育成と伴走支援
・沖縄県内のソーシャルスタートアップへの社会的インパクト投資
・県内外企業への経営コンサルティングおよびバックオフィス業務サポート
・社会的マイノリティ(障がい者、シングルマザーなど)向けの人材育成および就労サポート
沖縄の産業構造を変えていくことで、誰もが個性を発揮し、互いに補い合って発展していくあたたかい社会を生み出したいと考えています。
――山川さんが立ち上げられた事業「ゆいといろ」について詳しく伺えますか。
山川さん:「ゆいといろ」は、沖縄におけるソーシャルビジネスの実践・普及の取り組みとして2020年にスタートした事業です。“ゆいといろ”という名前は、昔から沖縄に受け継がれてきた「ゆいまーる(助け合いの精神)」と「十人十色」を掛け合わせた言葉で、「どんな人でも、ありのままで、共にいることのできる社会」を目指しています。
事業内容は、企業の内部管理体制を強化するバックオフィス業務全般の代行サービスを、発達特性や子育てなど様々な事情によって一般的な就労環境では働くことが難しい人たちが、互いに補い合いながらチームで行っています。1人では1人分の仕事ができなくても、3人で1/3ずつ仕事を分担してチームで支え合うことで、「1/3×3」を1より大きくすることができると考えています。また、業務を行う中で個人のスキルや適性に合わせて成長する機会を創出し、新たなスキルを獲得していくことで収入アップを目指せる環境づくりもしています。
さらに、2023年9月には「ゆいといろカレッジ」を開講し、未経験からデジタル経理人財を目指すプログラムも実施しました。その後、2024年8月からは沖縄県内のシングルマザーの皆さんが仲間と共にデジタルスキルを習得しながら就労機会を広げていくプロジェクト「StandUp!Mother」をスタートいたしました。本プロジェクトは、沖縄のシングルマザーの皆さんが安心し支え合えるピアサポートコミュニティの中で、基礎的なデジタルスキルを身につけ、自分らしく、キャリアアップを目指すことを目的としています。
このように、「ゆいといろ」の心を大切にした事業を展開していくことを通して“地域の企業”と“地域の人財”を結び、双方の成長をサポートすることで、沖縄全体をより豊かにしていきたいと考えています。
――うむさんラボの創業に携わるきっかけとなった原体験があれば教えてください。
山川さん:以前は東京で勤めていましたが、弊社代表の比屋根と出会い、彼の想いに共感したことから沖縄へ移住、うむさんラボの創業メンバーとして事業に携わりました。
事業立ち上げのきっかけとしては、沖縄県内企業・団体の経営管理体制が東京と比べて弱く、企業や人財の価値が低くみられてきたと感じたことにあります。また、沖縄が抱えるさまざまな社会課題解決に向けての取り組みがされているものの、セクター間での情報共有が不十分であったり、資源の配分が不均衡であったりすることで、全体として連携した取り組みになっていないと感じたことも挙げられます。
活動の背景には、沖縄県内企業の低い労働生産性や就労環境などの課題
――活動の背景には、どのような社会課題が挙げられますか。
山川さん:沖縄県の実情として、低い労働生産性と不安定で十分な収入を得られない就労環境があります。その原因の一つには、数字管理や人材育成に経営資源を投入できず持続可能な事業成長につながっていない経営管理体制があります。
また、地理的な位置と島嶼地域ということにより産業の多様化という面で障壁もあり、新しい産業の導入や既存産業の拡大が制限されることで雇用機会の創出にも影響がある状況です。
――課題の解決にあたり、行政だけでなく社会的企業・NPOなど民間の力が必要になるのはなぜでしょうか。
山川さん:沖縄の現状を変えていくためには、予算や期間が限定されやすい行政事業に任せるだけでなく、民間企業も主体性をもって持続可能なビジネスとして取り組んでいく必要があると考えています。
ビジネスの力で社会課題を解決し、沖縄らしい幸せの経済と社会をつくる
――活動をする上で最も大切にしていることは何でしょうか。
山川さん:沖縄の様々な社会課題を、ビジネスの力を通じて解決していくことです。またそのために、特性や事情によって一般的な就労が難しい人たちも、自分らしく活躍できる環境を創出することを大切にしています。
――今後の活動方針や新しく取り組みたいことなど、具体的な展望がありましたらお教えください。
山川さん:うむさんラボは「株式会社沖縄県」を目指しています。それは、自律共創の精神で、県民一人一人がワクワクしながら育んでいく「新しい沖縄の在り方」です。これを実現するために、企業の枠やセクターを超え、県民も巻き込んで、世界に誇れる沖縄らしい「幸せの経済と社会」をデザインしていきたいと考えています。
そんな「沖縄らしい自律共創型社会」構築のため、沖縄をより豊かにする新たな事業の創出、それにチャレンジする人財の育成、そして持続可能な仕組みとして確立すること、といった3つの観点から事業に取り組んでいきます。
――最後に、今ニュースとして特に発信したいことはありますか。
山川さん:2024年から、インパクト投資を行う「カリーインパクト&イノベーションファンド」の運営を行い、順次出資を進めています(10月末時点で4件)。
また、うむさんラボの目指すことと活動に共感できるプレイヤーが全国各地で増えてきたこともあり、うむさんラボが中心となって2025年2月8日(土)に「ミチシルベ2025」という株式会社沖縄県を共創体感するカンファレンス&フェスティバルを沖縄国際大学で行うことが決まりました。
このイベントは、ビジネスカンファレンスだけでなく、クラフトやマルシェなどのものづくり、音楽や伝統文化などのエンターテイメントの要素も入れて、大人も若者たちも楽しめるようにして、参加者ひとりひとりの勇気や希望となる「ミチシルベ」との出会いを創出したいと考えています。
今後は、沖縄から世界に平和・調和のメッセージを伝える万国津梁の祭典にして、県外や海外からもたくさんの人たちが集まるイベントに育てていきたいという想いで、毎年開催していきたいと思います。
「株式会社うむさんラボ」を支援する方法
山川さん:寄付による金銭的サポートや、プロボノなどの人的サポートをお願いできると助かります。人的サポートは、マーケティング・バックオフィス・クリエイティブなど各部門で専門性を持った方を幅広く募集しています。
また、社内業務などの業務委託を検討していただけると嬉しいです。バックオフィス以外にも、広報・SNS運用・動画制作など様々な業務を行っています。企業の所在地は沖縄県内外問いませんので、社内業務全般ぜひご相談ください。
【問合せ先】https://umusunlab.co.jp/contact