特定非営利活動法人 日本こども支援協会│NPO分析レポート

特定非営利活動法人 日本こども支援協会│NPO分析レポート

日本こども支援協会_ロゴ

名称 特定非営利活動法人 日本こども支援協会
法人番号 5150005008564
所在地 (本部)
〒542-0064
大阪市中央区上汐2丁目6-13 喜多ビル205号
(東京事務所)
〒100-0013
東京都千代田区霞が関1丁目4-1 日土地ビル2F
活動内容 虐待防止活動
里親啓発事業
里親支援事業
創業 2010年5月(NPO法人格取得:2015年3月)
役員 代表理事   岩朝 しのぶ
副代表理事  相澤 仁
理事     三代 徹正
理事     梅原 啓次
理事     伊藤  嘉余子
監事     佐々木 利記
Webサイト https://npojcsa.com
本レポートの趣旨
本レポートは、非営利団体の活動を第三者の中立的な立場から分析したものです。主に団体を支援している方々、もしくは団体への支援を検討している方々に向けて作成しております。寄付の判断材料として本レポートをご活用ください。なお、本レポートは、団体経営者へのインタビュー、活動現場の取材、財務諸表の分析、団体公表資料等の情報を基に作成しております。
本レポートで分かること
▶団体がどのような目的でどのような活動を実際に行っているのか
▶団体にどのような財源があり、どのように資金を使っているか
▶団体のガバナンスなど健全に運営される体制は構築されているか

要約

活動概要

特定非営利活動法人 日本こども支援協会(以下、同団体)は、虐待防止活動、里親啓発事業、里親支援事業に取り組むNPOである。日本には保護者のいない児童、被虐待児など貧困や暴力を原因に家庭環境上養護を必要とする子どもが約4万5千人いる(厚労省「社会的養護の現状について」2017年)。子どもの頃に貧困や暴力を経験すると、大人になってから自分の家庭でも同じような状況を作ってしまう傾向があり、親から子へ貧困や暴力が世代を超えて連鎖する。同団体は、貧困や暴力を原因に保護された子ども達に寄り添い、「愛のある暮らし」によって子ども達が抱えるトラウマをケアすることで次世代の虐待を防止することを活動目的としている。「愛のある暮らし」を実現する具体的な方法として、里親制度の普及および里親の支援を行っている。

活動の全体像

日本こども支援協会_活動の全体像

里親とは?
様々な理由で親と離れている子どもたちを、自分の家庭に迎え入れて家庭環境の下で養育する人のこと。また、里親制度とは、児童福祉法に基づいて、里親となることを希望する方に子どもの養育をお願いする制度。
親と暮らせない理由は、親の病気、家出、離婚、そのほかいろいろな事情がある。こどもが成⻑する上で必要な「愛情」と適切な養育「環境」を持って養育を⾏うことにより、⼦どもの健全な育成を図るのが里親制度の目的である。

ビジョン・ミッション

同団体は「里親が養育に専念できる環境を整えることで、こどもと親に愛が循環する社会の実現」を目指している。その上で、同団体では以下のビジョン・ミッションを掲げている。

日本こども支援協会_ビジョン・ミッション

社会的養護下にある子どもの多くは虐待を経験しており、その影響で本人も暴力的になり、結果として周囲や自分の子どもに虐待が連鎖してしまうことがある。同団体の代表理事である岩朝氏は、里親の必要性と里親の不足している状況について、団体Webサイトの代表メッセージで次のように述べている。

暴力的な環境から保護されてくる子ども達は、自らも暴力的であったり自暴自棄であったりします。でも、里親家庭で「自分だけをしっかり見てくれる大人」の存在に出会い心身共に安定してくると、勉強や様々な事に興味を持つようになります。社会に出ていった後も、実家のように帰ってくる場所があり悩みも相談できる。些細な事でも躓かずに生きていけるようになる。その後の人生においても永続的に影響があります。
『里親制度は次の世代の虐待防止になる』のです。だから、里親が必要なのです。
里親推進にあたりまず一番の課題は「里親家庭の不足」ですがこれと同時進行で「里親への支援」が必要です。里親になる人が4組増えても1組辞めてしまうような状況だからです。

一方で、同団体が理想とするのは『そもそも里親が必要とされない社会』である。「里親がたくさんいるから虐待を受けた子どもが増えても大丈夫ですよ」という状態を目指しているわけではなく、児童虐待死ゼロを目標に虐待防止に取り組み、出来るだけ親子が分離されずに親子のままで暮らせることが最も良い状態と考えている。しかしそれが叶わず社会的に養護された場合でも、子どもが充分な愛情を注がれながら安心して暮らせるよう、現時点では里親への支援や施設等との連携に取り組んでいる。

活動の背景

暴力や貧困が生む「愛のある暮らし」を知らない子ども達

児童養護施設にいる子どもの6割が虐待を経験している
同団体によると、一番多い児童養護施設の入所理由は、親からの「虐待」や「ネグレクト」であり、施設にいる子どもの6割が虐待を経験しているという調査結果がある(※)。これらの原因で入所した子ども達は、愛情を受けず、不適切な養育環境で育ってきている可能性が高くなる。人格形成する乳幼児期や幼少期、青年期の子ども達には「愛情」、適切な養育「環境」、「かかわり」が必要だ。子ども達があたたかい家庭で「わたしだけ、ぼくだけを見てくれる大人」に愛されながら育つ、そのような「愛のある暮らし」の中で絆を育む「愛着形成」が子ども達には必要となる。
※厚労省-児童養護施設入所児童等調査の結果(平成25年2月1日現在)

同団体が活動の軸としている「養育里親」とは、「愛のある暮らし」を経験できなかった子どもと暮らし養育することであり、健やかな人格形成に必要な愛情と適切な環境で里親が子どもを育てることである。

日本こども支援協会_活動の背景_001

里親としての子育てには多くの困難が伴う

里親に託されてくる子どもは、不適切な養育を受けていることが多いため、私たちが「当たり前」と感じる普通の生活を知らないケースが多くある。例えば、親が食べ終わるまで食事に手を付けてはいけないと思っている、歯磨きをしたことがない、お風呂の入り方が分からない、米飯だけしか食べたことがないため食べたいものを聞かれても答えられない等が現実にある。普通の生活を習慣づけることから始まる里親としての子育ては心身ともにハードといえる。
また、子育ての大変さに加えて、里親には特有の困難があり、結果的に里親の4人に1人が1年未満でギブアップしているのが現状だ。下図は里親が抱える困難の例。

日本こども支援協会_活動の背景_002

里親を「ひろげる」「ささえる」「つなげる」という役割

子ども達のケアに里親が必要な存在である一方、日本では里親が足りていない。日本にいる約4万5千人の社会的養育の子ども達のうち、約3万9千人が児童養護施設や乳児院で暮らしており、里親家庭で暮らしている子どもたちは約6千人。これはOECD諸国の中で最低の水準となっている。
里親が不足している要因として、①里親制度の認知度が低く母数が増えにくいこと、②里親の困難さ故に定着率が低いことが考えらる。同団体はこれらの課題に対し、里親を「ひろげる」「ささえる」「つなげる」という3つの役割を主な活動としている。

日本こども支援協会_活動の背景_003

関係する社会課題と指標

本項目についてはレポート全文p.8-p.14をご参照ください。
レポート全文:特定非営利活動法人 日本こども支援協会 NPO分析レポート(PDF)

行政の動向

新しい社会的養育ビジョン

社会的養育のあり方として2017年8月2日「新しい社会的養育ビジョン」が発表された。
その内容は、『まずは親子が分離されないように支援する事が最優先である事。しかし、親子分離に至ってしまった場合の代替養育は家庭での養育を原則とし、高度に専門的な治療的 ケアが一時的に必要な場合には、子どもへの個別対応を基盤とした「できる限り良好な家庭的な養育環境」を提供し、短期の入所 を原則とする。また、里親を増加させ、質の高い里親養育を実現する。』といった内容だ。
同団体によると、これは子どもを権利の主体者とした大変素晴らしいビジョンであるが、まだまだ里親の不足、里親の質の向上、担い手としての意識の向上、委託後の支援体制など、問題は山積している。

新政権の方針

岸田政権においては、「子ども基本法」の制定、「こども家庭庁」の創設が進められている。子ども政策について議論してきた政府の有識者会議の報告書では、こども政策を「政府の最重要課題として強力に推進すべきだ」と指摘している。「子ども基本法」は子どもの尊厳と権利が法制化されることとなり、法制度を基に「こども家庭庁」がより細やかな政策を実行できるようになることが期待される。しかしながら、どちらも実現には相応の時間が必要と思われる。現時点で「こども家庭庁」の創設は2023年の早い段階とされている。

なぜ行政だけでは解決できないのか

同団体の取り組む課題が行政だけで解決できない理由について、同団体は行政の施策が基本的に前例踏襲型となっており、課題の本質に辿り着きづらいことを挙げている。
行政には社会を動かす大きな力がある一方、関係者が多く足並みを揃えるのに時間がかかる。里親の母数が不足している状況に対して、新しく里親になる人を増やす、里親をギブアップしてしまう人を減らすという2つの課題があるが、行政にスピード感がないため、里親制度を広めるための新たな施策や、里親を続けやすくするための施策が十分に実施されていないのが現状と思われる。

重要視している社会指標

同団体は活動において、現時点で以下の社会指標を特に重要視している。
▶社会的に養護されている子どもの数:約45,000人(2021年5月現在)
▶里親登録数:13,485世帯
※厚労省「社会的養育の推進に向けて」(2021年5月)

同団体によると、現在は里親への委託率が先行している傾向にあるが、重要なのは里親の母数であるという。里親等への委託率は2020年3月時点の全国平均で21.5%となっており、残りの78.5%の子どもが児童養護施設や乳児院で生活している。2010年3月時点の里親等委託率の全国平均は11.1%であり、10年間で約10ポイント増加したことになる。また、里親への委託率は地域差が大きく、最小は熊本県の12.2%、最大は新潟県の60.4%となっている。
一方で里親登録数を見てみると、2020年3月末時点で13,485世帯となっているが、委託里親数は4,609世帯となっている。里親の母数(里親登録数)に対して、稼働率は34%ということが分かる。この稼働率から逆算すると、社会的養護下にある子ども約45,000人全員が里親家庭で生活できる社会にするためには、13万~14万世帯のと里親の母数が必要ということになる。これは現在の里親登録数の約10倍に相当する。この考え方から、同団体では里親の母数を14万世帯まで増やすことを一つの目標としている。

日本こども支援協会_重要視している社会指標_001

※厚労省サイト「里親制度等について」より転載

活動内容と実績

同団体の主要な事業は「里親啓発事業」「里親支援事業」の2つである。各事業の概要は次のとおり。

里親啓発事業

里親啓発事業は、社会的養護の状況にある子ども達の状況を広く知ってもらい、同時に里親制度の認知を広げることで、新たに里親となる人を増やすことを目指した活動である。主に次の2つの活動を行っている。

全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」

「onelove」は、10月4日の『里親の日』に社会的養護下の子どもの人数と同じ4万5千枚のチラシを日本全国の街頭で一斉配布する里親制度啓発キャンペーンである。全国の協力団体に対し、そのエリアで社会的養護下にある子どもの人数と同じ枚数のチラシを納品し、10月4日に一斉配布を行っている。配布するのは下写真のハート型のチラシで、中を開くと社会的養護下にある子ども達が置かれている状況や里親制度について、まず知って欲しいことがまとめられている。同団体によると、このチラシは多くのことを知ってもらうためではなく、手に取った人がまずは里親制度に関心を持ってもらうことを目指して制作している。内容は毎年ブラッシュアップを行っており、記載内容の見直し、デザイン面の調整、各自治体で連絡窓口を記載できる欄を追加するなど年々工夫を重ねている。「onelove」は同団体が初めて全国区で実施した大規模な活動であり、国内最大の里親啓発キャンペーンとして毎年実施されている。同団体が最も注力している活動の一つといえる。
なお、10月4日は日本で里親制度が始まった日であることから『里親の日』とされている。

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2020年はコロナの影響により、自治体の多くが参加を見合わせ、参加団体数も半減することとなったが、Twitter活用したデジタルプロモーションに注力し、結果としてチラシ枚数を上回るインプレッション数となり、多くの人へリーチすることができた。また、2021年はキャンペーンのシンボルであるハートマークと一緒に写真を撮影・投稿できるARフィルターを提供し、Twitter、Facebook、インスタグラム等により100万を超えるインプレッション数を得ることができた。

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こどもてらす〜To Zero for Children〜

「こどもてらす〜To Zero for Children〜」は、同団体の代表理事である岩朝氏がパーソナリティを務めているラジオ番組である。FM大阪で毎週土曜日20:30〜21:00に放送されている。主なコンテンツは「こどもに関わる社会課題を知ってもらう」「里親制度について知ってもらう」「子育てに関するお悩み相談」の3つである。
下記の番組ページ等で過去分の放送を視聴することができる。
こどもてらす~To Zero for Children~

里親支援事業

里親支援事業は、その名の通り、里親として社会的養護下にいる子どもの養育に携わる人々を支える活動である。主に次の3つの活動を行っている。

オンライン里親会「ONE LOVE」

里親はその大変さから4人に1人が1年以内に里親を辞めてしまうという現実がある。里親を継続するためには里親同士で悩みを共有し、つながり支え合うことが必要という同団体の代表理事である岩朝氏の経験から生まれたのが、オンライン里親会「ONE LOVE」である。「里親を誰一人取り残さない仕組みを実現する」を目指しており、里親同士でコミュニケーションをとれる場がこれまでは各地域の里親会や行政を通じたつながりが主だったことに対し、オンライン里親会として全国の里親が自由に参加できるコミュニティとなっている。
また従来から行っていた「里親ガイドブック」「里親からの相談窓口」の活動が「ONE LOVE」に集約されている。「里親ガイドブック」は、全国の里親、またこれから里親になる方に、必要な情報を適切に伝えるためのサイトであり、里親にとって有益な情報が20コンテンツに分類されて公開されている。「里親からの相談窓口」は、里親が抱える養育に関する悩みを相談できる場であり、「ONE LOVE」内で定期的に開催しているオンラインサロンを通して、先輩里親や里親仲間に養育相談を行うことができる。

主な実績

登録者数 1,851人(2022年1月29日時点)
– 応援メンバー1,408人
– 里親会員443人
オンライン里親サロン 毎週土曜日開催
開催数 :累計55回(2021年5月末時点)
参加人数:累計815人(2021年5月末時点)
特別イベント 2021年2月 「里親家庭で育った子どものお話を聴こう」
2021年2月 里親・(国会・地方)議員の意見交流会
2021年1月 「養子の方のお話を聴こう」
2020年11月「里親家庭で生活するあなたへー里親と実子のためのQ&A」
2020年5月 杉江流「SS式イライラしない子育て講座」

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里親会への助成

里親会は、里親自身が地域ごとに運営する当事者組織である。里親会は里親が支え合うためのコミュニティである一方、里親会の運営が大変で疲弊し、里子の養育に支障をきたす場合もある。同団体では、要望に応じて全国各地の里親会に運営ノウハウの提供や金銭的なサポートを行っている。

主な実績

支援数 累計64団体(2021年4月末時点)
支援金額 累計1,474,670円(2021年4月末時点)

里親アドボカシー

里親には、こどもの養育以外にも多くの精神的・金銭的負担が生じる。日本における里親の権利を向上させ、より里親が養育に専念できる環境づくりを目指し、同団体では里親アドボカシー活動を行っている。具体的には「里親に関する調査」「国や自治体への政策提言」を行う。

団体情報

基本情報

基本情報は本ページの冒頭に記載。

沿革

2010年5月 現代表理事の岩朝氏が任意団体として設立
児童養護施設での付き添いや学習支援を開始
2015年3月 NPO法人化
2016年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第一回実施(全国27自治体、配布地域94箇所)
2017年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第二回実施(全国47自治体、配布地域113箇所)
2018年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第三回実施(全国46自治体、配布地域90箇所)
2019年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第四回実施(全国97自治体、配布地域108箇所)
2020年4月 里親の相互支援コミュニティ「ONE LOVE オンライン里親会」開設
2020年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第五回実施
2021年4月 FM大阪にてラジオ番組「こどもてらす〜To Zero for Children〜」開始
2021年10月 全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」第六回実施

初期の活動としては、児童養護施設での付き添いを行っていた。これは夏祭りなど施設外のイベントに保護者として手をつないで児童に付き添うという活動である。施設職員だけでは特に夕方以降のイベントに子ども達を連れていくことは難しく、一般家庭であれば多くの子が経験していることを社会的養護下の子ども達にも経験できる機会を与えたいという思いから行っていた活動である。活動を続ける中、同団体は施設で暮らす子と、一般家庭に引き取られた子の間に精神面の成長差を感じるようになり、団体としては養護施設の暮らしをより良いものにするよりも、養護施設を出て一般家庭で暮らす環境を増やすことが子ども達にとって本質的に必要なことだと考えるようになった。その考えのもと、4年目からは里親啓発活動に専念する方針とした。5年目に大きな資金支援を得る機会があり、その資金をもとに開始したのが全国一斉里親制度啓発キャンペーン「onelove」である。当初は行政との連携を前提に進めていたが、複数の自治体と協調して新しいプロジェクトをまとめるのは困難を極め、独自でキャンペーンを推進。社会的養護下にある子どもの人数(当時全国4万6千人)と同じ枚数のチラシを全国で一斉に配布するキャンペーンはメディアの注目を集め、団体にとって大きな転機となった。2年目以降は協力する自治体も増え、現在も毎年キャンペーンを実施している。
任意団体として活動していたものを2015年にNPO法人化しているが、これは収益事業が生じたことで税務申告が必要となったため、どうせ申告するならと法人化したとのことである。今後の展望として認定NPOの認証取得も視野に入れている。

経営者プロフィール

代表理事 岩朝しのぶ 氏
▶略歴:20歳でカナダへ留学。その後、海外・国内で起業を経験しており、貿易会社の経営、通信回線代理店の経営、広告業でのプロモーション企画・提案など豊富なビジネス経験を持つ。
▶原体験:生まれつきの病気のため10歳頃まではほぼ病院で生活を送っていた。小児病棟では入院中に亡くなってしまう子も多く、両親や周囲の人がどれほど深く愛情を注いでも助からない状況を目にし、子どもながらに自分が何もできない無力感や悔しさを感じていた。大人になって虐待死などのニュースを見たときに、本当は失われずに済むはずの命が失われていることにやり場のない感情を憶え、幼少時の経験と重なって子どもの命について強く意識するようになった。
里親については、中学生頃に施設の子が里親に引き取られるのを目にする機会があり、その子の嬉しそうな様子を見て将来は里親になることを漠然と決めていた。30台になってから大阪市の里親啓発ボランティアに偶然参加したことを機に、改めて里親になることを決意。パートナーを説得して市の研修に通い、研修後すぐに里子を1人引き受けた。研修での予備知識はあったものの、実際に里親となったことで虐待やネグレクトを受けている子どもがいかに苦しい状況におかれているかを知り、また子ども自身はその状況が普通だと思っていることに言い表せないショックを受ける。
この体験を機に、社会的養護下におかれている子ども達が日本全国で当時3万6千人いること、里親が不足している事実を思い返し、目の前の子だけではなくもっと多く子ども達を助けるために里親の数を増やすことが必要だと強く感じ、活動を開始した。
▶経営者として大切にしていること:団体の経営トップとして大切にしていることについて、岩朝氏はインタビューの中で以下を挙げている。
「課題の解決の本質を考える」
「一人でも多くの子どもを助けることだけを大事にする」
「最善・最短の成果を考える」
「あきらめない」

運営体制

一般への情報開示の状況

項目 開示状況
定款 定款の内容はNPO法人として一般的な内容であり、特に留意すべき点は見受けられなかった。
活動計算書 過去2年分が団体Webサイトに掲載されている。
貸借対照表 過去2年分が団体Webサイトに掲載されている。
財産目録 過去2年分が団体Webサイトに掲載されている。

支援者への情報開示の状況

項目 実施状況
活動報告レター 年1回、活動報告書を作成し、支援者に郵送している。
活動報告メール 不定期ではあるもののメルマガとして支援者に活動報告を行っている。
Webサイト更新 Webサイトの「お知らせ」を頻繁に更新しており、活動報告を行っている。

役員構成

役職 氏名 役員間の
血縁関係
略歴
代表理事 岩朝しのぶ 経営者プロフィールを参照
副代表理事 相澤 仁 大分大学 福祉健康科学部 教授
理事 三代 徹正 住職。全国日蓮宗青年会。東日本大震災時に青年会が同団体に被災者支援の相談をしたことを切っ掛けに活動に共感し理事就任。
理事 梅原 啓次 (公財)全国里親会 評議員、大阪市里親会会長
理事 伊藤嘉余子 大阪府立大学 人間社会システム科学研究科 教授
監事 佐々木利記 金融・保険業の会社経営者。チャリティーイベントで同団体の活動に共感し、寄付支援の後、監事に就任。

役員は全員に血縁関係がなく、異なるバックグラウンドの人物となっている。独立性の高い役員構成であり、不正が起きづらい体制と言える。

理事会
同団体は理事会を設置している。理事会は毎月実施しており、活動方針に関する議論の他に会計報告を行っている。同団体によると、会計報告は代表理事を介さずに経理担当から直接理事会に報告する体制を取っている。
上記により職務分離の基本とされる、承認(Authorization)、記録(Recording)、管理(Custody)のうち資金の記録・管理は代表理事から分離された状態となっている。

外部専門家
顧問弁護士 佐賀 豪/くれたけ法律事務所
顧問税理士 税理士法人ゆびすい
顧問社労士 社会保険労務士法人ゆびすい労務センター

財務状態

収支推移

日本こども支援協会_財務状況_001
同団体は会費、寄付金、民間助成金を主な財源としており、寄付金は個人・法人の両方から募っている。2021年4月期まで役員報酬は支給しておらず、職員も事務局運営に必要な人員を雇用もしくは外注しているのみである。費用としては、里親啓発事業にかけている広告宣伝費が最も大きい。

2020年4月期の要点

▶クラウドファンディングにより収入増加:同団体は、2020年4月期に「ONELOVE里親コミュニティサイト」の立ち上げを資金使途としたクラウドファンディングを実施しており、7,648千円を調達している。2020年4月期の収入増加の要因はこのクラウドファンディングである。なお、クラウドファンディングサイト「READYFOR」の手数料として支払手数料1,463千円支出が計上されている。
▶サイト構築費を資産として計上:上記「ONELOVE里親コミュニティサイト」の構築費として合計8,174千円を支出しているが、サイト構築費は会計上で資産(ソフトウェア)として計上されるため収支には反映されていない。そのため収支だけを見ると次期繰越正味財産額が11,299千円となっているが、実際には収入の殆どを支出している。
▶職員を業務委託契約に変更:同団体は2019年4月期まで正規職員1名、パート1名を雇用していたが、2020年4月期の途中から直接雇用を辞め外部委託に切り替えている。より効率的な団体運営を考えた結果、そのような体制となった。

2021年4月期の要点

▶コロナ禍で活動継続が困難な状態に:新型コロナウイルスの感染拡大が始まった2020年1月から徐々に寄付金収入が減少し、2020年4月には数ヶ月活動するのが限界という財務状態に陥った。同団体によると2020年2月~4月は団体創立以来の低収入だったとのこと。2020年5月1日付で団体サイトにお知らせが掲載されており、継続困難な状況にあること、可能な範囲で団体を支えて欲しいことが伝えられている。
▶日経新聞掲載、NHK放送を機に寄付金が集まる:5月に継続困難な状況を発信したことにより、3日間で約300万円の緊急寄付が集まった。さらに6月17日の日経新聞に同団体の活動と緊急支援を必要としていることが掲載され、さらに6月29日にNHK放送でも同団体が紹介された。これにより、活動に共感した多くの人々から短期間で寄付金が集まった。この反響は同団体の予想を遥かに超えるもので、事務処理が追い付かない程であったとのこと。結果的に2021年4月期は前期の約2.5倍となる50,299千円の寄付金収入となり、今後も活動継続が可能な状態となっただけでなく、活動を加速・拡大するための資金を得ることができた。
▶行政委託事業を開始:豊島区より里親啓発事業を受託しており、委託事業収入として1,826千円を計上している。全国一斉里親制度啓発キャンペーンの実績を見た同区からの依頼により開始した。
▶広告宣伝費:主にOSAKA里親WEEK(※)、オンライン里親会用のZoom手引書作成、豊島区から受託している里親啓発事業、ONELOVEオンライン里親会等に使用したことにより、昨年度から9,212千円増加し、10,890千円となった。
※2020年11月16日〜29日に大阪で里親啓発活動を集中的に展開。北大阪阪急電鉄の広告ハーフジャック、ポスティング7万枚、FM大阪「hug+」(はぐたす)里親特番を実施。
▶運営に行き詰まった里親会へ金銭的な支援を実施:2021年4月期から新たに里親会支援給付金1,474千円の支出を計上している。コロナ影響により運営に行き詰まった里親会に対して金銭的な支援を行うもので、全国64箇所の里親会に支援を実施した。
▶外注費:主に急激に増加した事務等を外部委託したことにより外注費891千円を計上している。
▶支払手数料(事業費):主にONELOVEオンライン里親会の運営・管理に関わるコンサルティングやリスティング広告運用手数料として3,006千円を計上している。
▶支払手数料(管理費):主に商標登録費用(「里親の日」「ONE LOVE」)、SNS広告運用手数料として1,381千円を計上している。

貸借対照表

日本こども支援協会_財務状況_002
コロナ以前の2019年4月期を見ると、正味財産は△717千円となっている。同団体は「運営を維持するための事業」はぜす、集まった資金はできる限り活動に使い切る方針をとっている。これは団体の維持よりも社会課題の解決を最優先にしているためである。正味財産のマイナス分は借入金で補っている。

2020年4月期の要点

▶「ONELOVE里親コミュニティサイト」をソフトウェアとして計上:前述のとおり、クラウドファンディングにより7,648千円を調達し「ONELOVE里親コミュニティサイト」の構築費を行った。構築費はソフトウェアとして貸借対照表に計上されており、期末時点では7,629千円の残高となっている。

2021年4月期の要点

▶借入金返済:従来は不足している活動資金を短期借入金によって補っていたが、当期に集まった寄付金を基に借入金を返済した。これにより団体の財務体質が強化された。
▶次期繰越32,658千円の使いみち:日経新聞掲載、NHK放送を機に集まった寄付金については期中に全額使用せず、32,658千円を正味財産として次期に繰り越している。同団体によるとこの資金を温存する考えはなく、課題解決のため既に使いみちを決めているとのことである。詳細は非公表だが、より大きなインパクトやムーブメントを起こすために様々な企画が進んでいる。

ファンドレイジングの状況

支援者数
寄付支援者数(法人含む):699名(2021年1月~12月)

支援団体
株式会社ReginaRomantico
妙法寺
株式会社アドバンスクリエイト
Yogibo
FM大阪
TOKYO FM
シオン化学工業株式会社
タカラアセットマネジメント株式会社
タカラレーベン・インフラ投資法人
白水興産株式会社
積水ハウスマッチングプログラム
クレディ・スイス銀行
リタワークス株式会社
医療法人佑世会 皮膚科生駒熊本クリニック
株式会社コチコンサルティング
株式会社プロロジス
フェリング・ファーマ株式会社
一般社団法人レオ財団
株式会社ベルックス
医療法人社団 智政会 クロイワ歯科
junko imagawa
株式会社伊藤園
株式会社マザープラス
株式会社Dreams
一般社団法人日本姿勢予防医学協会
ゴールデンラビットビール
株式会社整理収納教育士
他79団体

ネガティブワード検索

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ニュース&トピックス

業界初のラジオドラマによる啓発キャンペーンを実施
業界初の取り組みとして、ラジオドラマを公開している。
全4話・各25分程度であり、これを聴くだけで次のような内容を知ることができるようになっている。
・子ども達の現状
・里親制度の概要
・どうやって里親になるのか?
・里親に必要な条件は何か?
・どんな子どもが家庭にくるのか?
・どんな風に子どもとの暮らしが始まるのか?
・独身でもなれるのか?
・転勤があった場合はどうなるのか?
・どんな理由で別れていくのか?
また、子どもと別れた後の里親の葛藤や切なさ、喜びがドラマの中で描かれている。
全4話は下記URLから無料で視聴することができる。
HELLO, ONE LOVE~ひかりとみらい~(AuDee)

レポート全文

レポート全文:特定非営利活動法人 日本こども支援協会 NPO分析レポート(PDF)

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