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発達障害の方が自分らしく充実した暮らしを送るために、押し付けないサポートで社会参加の足がかりを提供する―NPO法人 パルレ

ソーシャル・ウォーカー

ソーシャルセクターで働く方々からお話を伺いながら、社会課題の世界を散策するインタビュー記事コーナー「ソーシャル・ウォーカー(Social Walker)」。市⺠活動やソーシャルビジネスを行っている組織の活動をより多くの人にお伝えしていきます。
第4回目は、「NPO法人 パルレ」の代表理事である熊谷 恵美さんにお話を伺いました。

NPO法人パルレ

国内の800万人以上にその可能性があるとも言われる発達障害。生まれつきの特性により、人とのコミュニケーションが苦手であったりすることで「変わった人」「困った人」などと周囲から思われてしまうことがある一方、特定の分野で優れた能力が発揮される場合もあります。NPO法人 パルレでは、発達障害児・者が地域社会でより安定した主体的な生活を送ることができるよう、社会参加の方法を当事者及びその家族と共に考える自立支援や、発達障害への理解を広める活動に取り組んでいます。

団体紹介

名称NPO法人 パルレ
公式HPhttps://www.npo-parler.com/
事務所所在地〒141-0021 東京都品川区上大崎1-20-12ぷらーす2階
問合せ先070-6661-9303
事業内容・相談・講師派遣など法人独自の活動
・品川区発達障害・思春期サポート事業
・指定障害児相談支援事業所
・品川区すまいるスクール職員向け巡回相談
・発達障害青年期余暇支援事業

今回お話を伺った人

熊谷 恵美(くまがい えみ)さん
「NPO法人 パルレ」代表理事
■プロフィール
明治学院大学大学院文学研究科心理学専攻修士課程修了。臨床心理士、公認心理師。
私立中高一貫校、公立小・中学校スクールカウンセラーを経て、2014年よりNPO法人パルレ非常勤心理士、2017年よりNPO法人パルレ代表理事就任。


――熊谷さん、本日はどうぞよろしくお願いします。

熊谷さん:よろしくお願いします。

発達障害のある方が自分らしく、充実した暮らしを送れる社会に

――はじめに、「パルレ」の活動概要を教えていただけますか。

熊谷さん:発達障害のある方が自分らしく充実した暮らしを送れるよう、ご本人やご家族の支援を行うとともに、発達障害への理解を広げるための啓発・講演活動などに取り組んでいます。

主な活動は、品川区の委託事業で行っている発達障害・思春期サポート事業「ら・るーと」と、独自に行っている青年期余暇支援事業「よかりんく」です。その他、指定障害児相談支援事業も行っていて、障害者の方が福祉支援を受ける際に必要となるサービス利用企画を立てる計画相談支援を、18歳までを対象に行っています。

――「ら・るーと」「よかりんく」の具体的な活動内容を伺えますか。

熊谷さん:「ら・るーと」は、発達障害の特性がみられる小学4年生~大学生の年代の方とそのご家族を対象としたサポート事業です。具体的には、ご家族との相談や、お子さんのグループ活動(クッキングやゲームなど)、スタッフと一対一で取り組む個別活動(余暇活動)を行っています。
この活動は、社会生活を送りやすくするための学びをサポートするというよりは、まずはお子さん達に活動を通して「ありのままの自分で良い」ということを感じていただき、ご本人発信でやりたい事やできるようになりたい事が出てきた時に、そこを伸ばすためのサポートに取り組んでいます。

「よかりんく」は、発達障害をお持ちのおおむね18歳~34歳の方を対象とした余暇支援事業です。もとは東京都福祉保健財団助成事業でスタートした余暇を通した居場所支援活動でしたが、その必要性から細く長くやっていこうとパルレで引き継ぎ行っています。
すでに働いていらっしゃる方にとっては、就労を継続するために必要な楽しみの場になりますし、まだお仕事に就いていない方にとっては、ずっと家にいるのではなく、少し外へ出て好きなことを仲間と共に楽しみたいというニーズを叶える場になっています。

よかりんくの様子
よかりんくSwitchクラブの様子
よかりんくの様子
よかりんく将棋倶楽部の様子

――団体を立ち上げた経緯はどのようなものだったのでしょうか。

熊谷さん:私は2代目の代表なのですが、団体の立ち上げは、発達障害のお子さんを持つ保護者の方が中心となり、親の会として1998年に活動が始まりました。当時は療育などほとんどなく、世間の理解も得られない中、保護者同士の勉強会や専門家を招いての集会を行うなど手探りで活動が行われていました。
私は以前スクールカウンセラーをしていたのですが、カウンセリングで発達障害が疑われる子どもと接する機会も多くあり、対応について学ぼうとパルレの勉強会に参加していました。そのご縁で非常勤の心理士として活動に携わるようになったのですが、7年程前に代表を引き継ぎ、現在に至ります。

支援活動や啓発活動を通し、発達障害による二次障害を防ぐ

――活動の背景には、どのような社会課題が挙げられますか。

熊谷さん:発達障害の特性を理解した上での余暇活動支援が少ないことや、発達障害についての理解不足があると思います。
発達障害についての理解が周囲から得づらい環境の中で、二次障害が引き起こされるケースが思春期以降になると増えます。二次障害として多いのは、うつや強迫性障害、家庭内暴力などです。
また、重度の障害をお持ちの方に限ってお話しすると、ガイドヘルパーの数が少ないことによって支援を受けにくく、社会に出づらいといったこともあります。

――課題の解決にあたり、行政だけでなくNPOなど民間の力が必要になるのはなぜでしょうか。

熊谷さん:品川区では、発達障害のある方の思春期以降のサポートが大事だということで、余暇活動支援「ら・るーと」に取り組んでいますが、余暇活動支援が自治体の事業として行われるのは、おそらく全国初です。
行政からすると、見方によっては、みんなで自由に好きなことをしているとも捉えられる余暇活動に予算は付けづらく、訓練をして何かを身につけるような事業の方が望まれるかなと思います。事例の少ない先進的な取り組みは、行政で扱うことが難しいのではないでしょうか。
しかし、余暇活動は二次障害の予防にも繋がりますし、より健康度を保ち過ごしていただくことで、医療費の削減に繋がることもあると考えています。二次障害にならずに思春期を乗り越え大人になっていただけたら、発達障害の特性のみであれば、わりと社会生活も何とかなります。そのためにも、私たちのような支援活動が必要だと思っています。

発達障害のある方が「ありのままの自分」を大切にできる支援活動

――活動を行う上で、大切にしていることは何でしょうか。

熊谷さん:発達障害のある方がありのままの自分で良いということを実感できるよう、活動の際には特性に合わせたセッティングを行い、成功体験を積めることを大切にしています。「自分にはこのようなところがあるけれど、こうしたところを手伝ってもらえると上手くいった」という経験を積むことで、社会生活においても自ら手伝って欲しい部分を伝えることができれば、周囲とより良い関係性を築いていくことにも繋がるのではないかと思います。
また、ご本人の「やりたいこと」や「好きなこと」がある際には、それを大事に育てていくことを大切にしています。発達障害の支援というと、一般的にはソーシャルスキルトレーニングや運動療法のように、短期間訓練をしてステップアップを目指すものが思い浮かぶのではないかと思います。実際、保護者の方もそのように社会への適応を目指す方が多く、そうしたニーズがあることは承知していますが、発達障害の特性を考慮したうえで、ご本人がやりたいことを育てていく方法でも楽しく暮らしていくことができるので、そのような支援の仕方で活動をしています。これは先進的な取り組みで、同じ分野で活動している団体に「特定非営利活動法人 ネスト・ジャパン」がありますが、代表の本田秀夫先生はこの分野の第一人者で、その多彩な余暇活動は私たちの目指しているところでもあります。

――今後の活動方針や新しく取り組みたいことなど、具体的な展望がありましたら教えてください。

熊谷さん:パルレでは、ご本人だけでなく、ご家族へのサポートも重要であると考えています。現状、ご本人が利用できるサポートはずいぶん増えましたが、ご家族が日常的な相談を継続して受けられる公的リソースは希少です。その意味でも、「ら・るーと」は品川区の先駆的な取り組みと言えます。このような取り組みが、思春期だけでなく、すべての年齢で充実していくことを目指し、活動を続けてまいりたいと思います。


「NPO法人 パルレ」を支援する方法

熊谷さん:「よかりんく」は行政の支援を受けずに独自で運営している事業です。安定して継続するためには十分な運営資金が必要ですので、寄付によるご支援をいただけると幸いです。
また、直接的に何かをしてくださることだけではなく、発達障害への理解がある市民が増えると非常に心強く、ありがたく思います。学習会や啓発講演会を行っているので、ぜひ一度そういったものに参加していただけると嬉しいです。

【会員募集ページ】https://www.npo-parler.com/enrollment-guidance/



◆次回の啓発講演会…7月29日(土) 14:00~16:00
『障害のある子の「親なきあと」ー親ある間にできることー』
渡部 伸先生(親なきあと相談室代表 行政書士 社会保険労務士)

◆次回のペアレント・トレーニング
ペアレント・トレーニング水曜講座(全7回)
中田 洋二郎先生(立正大学名誉教授 日本ペアレント・トレーニング研究会会長)

◆次回のパルレ学習会…8月11日(金・祝) 13:30~16:45
ペアレント・トレーニング入門:発達支援と保護者支援の工夫とヒント(支援者向け)
中田 洋二郎 先生 (立正大学名誉教授 日本ペアレント・トレーニング研究会会長)

※年間予定については、こちらからご確認いただけます。