コンテンツへスキップ

生演奏の音楽体験を広めたい、プロ奏者のコンサートをカジュアルに提供する―NPO法人 音めぐり

ソーシャル・ウォーカー


社会課題解決の現場で働く方々からお話を伺い、その内容をインタビュー記事として発信するWebメディア「ソーシャルウォーカー(Social Walker)」。市⺠活動やソーシャルビジネスに焦点を当て、事業内容や背景にある社会課題、行政だけでは課題が解決されない理由などを独自インタビューを基に発信しています。
第6回目は、「特定非営利活動法人 音めぐり」の理事長である山崎 千晶さんにお話を伺いました。

ヨーロッパ諸国と比べ、生演奏を楽しめる場が限られる日本。クラシックコンサートは室内の音楽ホールで行われるものが大部分であり、野外などでカジュアルに演奏を楽しめる場が乏しく、地方ではコンサートの開催自体が少ないというのが現状です。そんな日本のコンサートの文化を変え、五感に訴えるプロの生演奏をより多くの人が気軽に楽しめるよう、「音めぐり」は設立されました。ショッピングモールや小学校といった身近な場でのコンサートを開催し、初心者でも楽しめるように工夫された音楽をプロの演奏者のクオリティで人々に届けています。

団体紹介

名称特定非営利活動法人 音めぐり
公式HPhttps://otomeguri.org/
事務所所在地〒141-0021 東京都品川区上大崎3-14-58 クリエイト目黒 2-A
問合せ先https://otomeguri.org/contact
事業内容・商業施設、公共施設、野外などでの演奏活動の開催事業
・その他目的を達成するために必要な事業

今回お話を伺った人

山崎 千晶(やまざき ちあき)さん
「特定非営利活動法人 音めぐり」理事長
■プロフィール
ヴァイオリニスト、作曲家。
桐朋学園大学卒業。プラハ留学後、スペイン王立セビージャ交響楽団、チェコ共和国西ボヘミア交響楽団、ピルゼンフィルハーモニーに所属。18年のヨーロッパ生活より2015年帰国後、日本で活動。


――山崎さん、本日はどうぞよろしくお願いします。

山崎さん:よろしくお願いします。

プロの音楽ならではの感動をもっと身近に、気軽に楽しめる機会を


――はじめに、「特定非営利活動法人 音めぐり」の活動概要を教えていただけますか。

山崎さん:主な活動は、クラシックコンサートの開催です。地域や世代、その他の環境的にコンサートホールまで音楽を聞きに行く機会がない人のために、コンサートを開催しています。現在は東京での活動が多いですが、今後は地方都市にも活動の範囲を広げていきたいと考えています。
また、コンサートに限らず、小学校での「指揮者体験andワルツ体験」など参加型で音楽を楽しめるイベントも行っています。

「指揮者体験andワルツ体験」の様子

――山崎さんが事業を立ち上げるきっかけとなった原体験はございますか。

山崎さん:私は以前チェコで温泉オーケストラに参加していたのですが、そこでの経験が立ち上げのきっかけです。チェコでは、夏になるとバカンスで温泉に訪れ、オーケストラの演奏を楽しむという文化が100年ほど続いています。演奏は温泉近くの散歩道のアーケードで行われるのですが、そこに人々がふらっと立ち寄り、立ち見で気軽に小編成オーケストラの演奏を聴きます。日本の場合、こうした気軽に楽しめる生の演奏活動を行っているのはアマチュアの方が大半なので、本格的なプロの演奏をより多くの人に届けられたらいいなと思い活動を始めました。


活動背景には、日本における音楽芸術の文化体験の少なさ


――活動の背景には、どのような社会課題が挙げられますか。

山崎さん:文化的な背景から、日本はヨーロッパに比べて生の演奏や演劇を体験する機会がとても少ないと感じます。数年前に水戸で大学生向けのコンサートを開催したのですが、「生演奏を聴くのは初めて。生で催し物を体験すること自体初めて。」と言われて大変驚きました。同日、水戸の小学校でもコンサートを行ったのですが、プロの生演奏を体験できることを羨むような保護者の姿が小学生よりも印象に残りました。

五感で感じる生演奏は、心を豊かにしてくれる感動的な体験だと考えています。チケットを購入する余裕はないけれど、機会があればプロ奏者の音楽を楽しみたいという人はたくさん居ます。そういった方々のために、誰もが気軽に参加できるコンサート活動をしたいと思っています。

――課題の解決にあたり、行政だけでなくNPOなど民間の力が必要になるのはなぜでしょうか。

山崎さん:行政では現場の状況把握に限界があるため、本当に望まれているものと提供されるものの間にミスマッチが起きやすいと感じます。例えばコンサートのプログラム構成や演出を考える際、柔軟にアイデアを取り入れて地域や世代に応じた魅力的なコンサートを提供できるのは、民間団体の私たちだと思います。行政は税金を財源としていることもあり、前例のない斬新なアイデアを取り入れることが難しく、失敗のない無難な構成に落ち着きがちです。行政担当者の方の負担を考えても、新しいチャレンジに取り組みにくい状況がうかがえるので、民間団体が実情に合ったアイデアを実現可能なレベルまでまとめ、行政と共に作り上げていくことが理想ではないかと思います。


大切なのは、クラシック音楽をプロ奏者の生の音で多くの人に届けること


――活動をする上で最も大切にしていることは何でしょうか。

山崎さん:日本のクラシック音楽の提供の仕方に限界を感じているので、野外コンサートや街角コンサートなど、気軽に立ち寄れる場所での演奏を大切に考えています。クラシック音楽には、敷居の高いイメージがあると思います。おそらく、日本人には「気軽に聴ける音楽」という感覚があまり無いのではないでしょうか。そこで、敷居の高くない、初心者でも楽しめる感動的なコンサートにすることを大切にしています。具体的には、プログラム構成やコンサート演出の工夫です。例えば、子ども向けには「スーパーマリオ」の曲を入れたり、多世代向けには誰でも聴きやすいよう馴染みのある曲を入れたり、コンサートに合わせてプログラムを考えます。また、一般的なコンサートとは違い、双方向でコミュニケーションがとれるような参加型の仕掛けや、ユーモアのある司会進行、コスプレでの演奏といった演出をしています。

コロナ禍ではオンラインのコンサートも普及しましたが、やはり生演奏で聴くことに価値があると考えています。どれだけ性能が上がってもスピーカーから流れる音は機械が再現した音であり、本物の音とは異なります。生演奏の魅力は、音色のみならず、音の振動や会場の空気感、目の前に演奏者がいる熱気など、五感で音楽を楽しめる点です。そんな生演奏の魅力を、多くの人に届けていきたいと思っています。


――今後の活動方針や新しく取り組みたいことなど、具体的な展望がありましたらお教えください。

山崎さん:私自身も理事のメンバーも海外での活動経験が豊富なため、いずれは海外との活動を視野に入れています。具体的には、海外芸術家の招聘支援や、邦人芸術家の海外公演支援を考えています。
また、縁あって障害児施設での演奏を行ったことをきっかけに、障害があるとコンサートに参加することが難しい現状を知りました。地方都市だけでなく、都内でも生演奏に触れる機会がない方もいるので、そうした方に向けた活動もまた行えたらと思っています。

――最後に、今ニュースとして特に発信したいことはありますか。

山崎さん:12月8日(金)に「ルーテル市ヶ谷ホール」で小学校の鑑賞教室を兼ねたコンサートを開催します。一般参加枠もあり、小学生以下は無料でお越しいただけるので、ぜひ親子でご参加ください。

※コンサートのお申し込みはこちら


また、コンサートができる場所やコンタクトを探しています。地方都市や自治体で、一緒にコンサートをやってくださる場所(コンサートホールなど)や団体を募集していますので、ご協力いただける方はご連絡をお願いします。

特定非営利活動法人 音めぐり」を支援する方法

山崎さん:入場無料のコンサートや、運営費(演奏者への謝礼や交通費等)をまかなうための寄附金のご支援をお願いできると助かります。また、賛助会員の募集も行っています。会員特典もご用意していますので、ぜひご検討いただけると嬉しいです。

◆寄付に関する詳細はこちらから
◆賛助会員の募集に関する詳細はこちらから



《次回コンサートのご案内》
「音めぐり」では、運営資金にも繋がるコンサートを定期開催しています。
次回は11月の毎週土曜日に開催されるので、ぜひこちらからチェックしてみてください!