社会課題解決の現場で働く方々からお話を伺い、その内容をインタビュー記事として発信するWebメディア「ソーシャルウォーカー(Social Walker)」。市⺠活動やソーシャルビジネスに焦点を当て、事業内容や背景にある社会課題、行政だけでは課題が解決されない理由などを独自インタビューを基に発信しています。
第10回目は、「株式会社AsMama」の取締役兼事業本部長である田中 慎也さんにお話を伺いました。
少子高齢化・核家族化・ライフスタイルの変化など、様々な要因によって希薄化している地域の人々の繋がり。そこには、地域で暮らす人々を孤立化させるなどの問題があります。
株式会社AsMamaでは、地域住民や企業、自治体と共に、強制されることのない“ゆるやか”な地域コミュニティを生み出し、誰もがより安心して過ごせる環境づくりを全国各地で行っています。
団体紹介
名称 | 株式会社AsMama |
公式HP | https://asmama.jp/ |
事務所所在地 | 〒231-0023 神奈川県横浜市中区山下町73-1306 |
問合せ先 | https://asmama.jp/#contact |
事業内容 | ■交流・体験学習イベントの企画・運営 ■共助SNS(システム)の設計・構築・運営・監視 ■人材・団体の育成、エリア・マネジメント ■マーケティング新事業、コンサルティング |
今回お話を伺った人
田中 慎也(たなか しんや)さん
「株式会社AsMama」取締役兼事業本部長
■プロフィール
東京都生まれ。米国へ留学し4年制大学を卒業。その後、HRコンサルタント及び人材紹介会社を起業。
その後2016 年 5 月にAsMamaに参画。入社以来自治体連携による地方創生案件執行責任者を歴任。
現在は、取締役兼事業本部長としてコミュニティ活用を模索する官民連携及び企業連携事業コンサルからプロジェクト実行の責任者を執行。
【専門分野】
行政・自治体連携、再開発支援
【主な業務実績、資格、スキル】
自治体やディベロッパー事業者と共に地方創生や、まちづくり・再開発事業に取り組んできた経験、ノウハウを多数有する
――田中さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
田中さん:よろしくお願いします。
全国各地で「共に頼り合う」地域コミュニティを創生
――はじめに、「株式会社AsMama」の事業内容を教えていただけますか。
田中さん:全国各地で、子育てや暮らしの共助コミュニティづくりを行っています。過去の実績も含めると、50以上のコミュニティを展開しています。地域の課題に応じて多世代交流を図り、地元住人同士が頼り合うことで、出産や子育て、日常生活の負担を減らすことができます。日々の負担軽減だけでなく、得意を活かして支援できる人にとっては、生きがいにもなる取り組みです。また、コミュニティづくりは自治体や地元の事業者と連携していますが、店舗や企業にとっては住人との関わりが生まれ、副次的に希望する人材の雇用や顧客獲得にもつながっています。
弊社最大の特徴は、「アナログ」と「デジタル」の両方を駆使することで、持続可能な共助コミュニティを自走化させられる点です。「アナログ」とは、地域人材の育成と、地域活性化イベントの実施支援などです。「デジタル」は、自社開発アプリを活用して、子育てやモノ・スキルなどを保険付きで安心して頼り合える仕組みのことです。現在、全国で2000名に及ぶ地域人材(シェア・コンシェルジュ)が弊社認定担い手として登録されており、年間で累計2000回の交流イベントが全国各地で開催されています。そうした活動を通じたアプリユーザーは、子育て世帯を中心に13万世帯です。
弊社の取り組みは、国が掲げる「公助・自助・共助」の先駆け的な取り組みとして、総務省地域ICT活性化大賞や日本サービス大賞優秀賞等、数々の賞を受賞しております。
――「シェア・コンシェルジュ」は、どのような属性の方が在籍していますか。また、具体的な活動内容についても教えてください。
田中さん:以前は8~9割の方がママでしたが、立ち上げから10年が経った2019年頃にはコミュニティ創生事業も始まって人とのつながりが増え、現在は多種多様な人材が幅広く在籍しています。
「シェア・コンシェルジュ」は広報アンバサダーで、地域の情報収集・発信、地域内の交流機会創出、シェアリングのサポートが主な活動内容です。代表理事の甲田がシェアリングエコノミー協会の創設理事をしており、我々としても「シェアリング」を大切にしています。時間とスキルをシェアすることで、お互いのちょっとした困りごとを解決していく。こうした「共助」の考え方・活動を広めていく役割も、シェア・コンシェルジュは担っています。
――「子育てシェア」は、自治体が行っているファミリーサポート事業に近い印象を持ったのですが、違いや連携して行っている取り組みはありますか。
田中さん:弊社が提供している地元の共助コミュニティアプリ「マイコミュ」内に子育て支援のサービスが入っています。「マイコミュ」は、コミュニティ創生プロジェクト実施エリアのみでご利用いただけるアプリで、自治体や企業がリードパートナーとなり、住人同士が暮らしや子育てを助け合う仕組みです。例えば茨城県境町や神奈川県箱根町では、「子育てシェアタウン」として行政と連携しています。
現在、ファミリーサポート事業は援助者の高齢化や担い手不足で、利用者とのマッチングが難しくなってきています。我々が行っている子育てシェアは、知り合い同士が気軽にサポートし合える取り組みです。依頼時にも双方に負担感がないようなシステム設計がされており、サポート時は保険も適用されるので、安心して利用することができます。
――田中さんが事業に携わるきっかけとなった原体験はございますか。
田中さん:私は大学卒業後、人材コンサルティング会社を立ち上げ、10年以上経営していました。当時から「人の幸せを追求したい」という想いがあり、人生の大半を占める仕事が、人の幸せを追求する上で重要だと考えていました。その後、自分のライフステージの変化と共に、人を形成する原点とも言える「家族・家庭」に関心が高まり、そうした分野で人の幸せを追求したいと思うようになりました。今よりもソーシャルで、ビジネスとして成り立つ事業を作っていきたいと考えていたところ、弊社代表の甲田が登壇しているフォーラムで出会い、まさに社会事業の領域で、多世代の共助インフラを全国に構築しようと奔走しているという話を聞き、面白いなとビビッときました。自分の得意な営業や人材領域を活かして、経営の一員としてジョインすることを決め、今に至ります。
地域コミュニティの希薄化で生じる、様々な問題
――活動の背景には、どのような社会課題が挙げられますか。
田中さん:コミュニティの希薄化や、子育て・暮らしの負担を各家庭が抱え込んでしまう慣習があると思います。例えば、子育て世代は子育ての頼りどころがないと、男女いずれかの就労時間を減らさなければならない。離職してしまえば、世帯収入が減り、経済的理由でさらなる子育て負担や産み控えが増えます。また、子どもたちは、いざという時には近隣を頼っていいということを学ばずに育ち、日本の子どもたちの1/3は孤独感を感じているというデータもあります。活動をする中でも、小学3年生以降になると留守番をする子が増え、両親が働いている間は家でスマホやゲームをして過ごし、そのような状態が休日も続くことで家以外での体験活動が減っている現状を目にします。一方で、7割のシニア世代は若年層と関わる機会すらなく、介護や日常の支援が必要でも周囲を頼ることができずにいます。双方の交流減少は、互いに孤軍奮闘状態を招くだけでなく、お祭りなどの地域行事縮小にも繋がっています。
人口減少化において、特に地方では、子育てや高齢者向けのサービスを民間サービスが担うことは経済原理から考えても一層難しくなると思います。だからこそ、住人同士や地域事業者も加わりながら、地域共助の実装が不可欠な時代だと考えており、政府もシェアリングを今後取り組むべき中核事業として宣言しています。
――課題の解決にあたり、行政だけでなく社会的企業・NPOなど民間の力が必要になるのはなぜでしょうか。
田中さん:1億総活躍といわれて久しいですが、行政だけでなく、企業もNPOも生活者自身も、他人任せにせずに誰もが地域社会の一員として「何ができるのか」「どんな役割なら担えるのか」を意識し、積極的に実行していくことが大事だと思っています。
そのためAsMamaでは、地域コミュニティづくりを担う企業や自治体と連携するプロジェクトにおいても、既に地域で活躍している団体や企業、個人はもちろん、少しの支援があれば地域活動に参画できる個人や店主、事業者を発掘・活躍支援して、地域のステークホルダーをゆるやかに巻き込む役割を担っています。「自分の距離感」「自分のタイミング」で活動できる“ゆるやかな”コミュニティ形成を行うことで、多くの人が参加しやすいようにしたいと考えています。
持続可能な共助コミュニティづくりに大切なのは「三方良し」
――活動をする上で最も大切にしていることは何でしょうか。
田中さん:クライアントである「自治体や企業」、我々「AsMama従業員」、そして、事業者や活動団体を含む「地域の担い手」の三方良しを目指しています。まちづくりには、時間も労力も費用もかかります。この三方良しのバランスを崩さず、しっかりと結果を出していくことこそが、それぞれにとってサステイナビリティに不可欠な要素です。
また、AsMamaだけで変えられる慣習ではないものの、「互いに感謝しあえること」「頼って良いし、頼られればなお良い」という文化を根付かせることも日々心がけ、全国のプロジェクトに携わっています。
――今後の活動方針や新しく取り組みたいことなど、具体的な展望がありましたらお教えください。
田中さん:コロナ禍を経て、身近な人たちとのつながりづくりや、経済格差が体験格差に直結しない社会的仕組み、災害時の近隣共助などは益々注目されています。そうした意味では、国内での共助のまちづくりを今後もスピード感をもって推進していくことが、弊社の課題であり展望です。一方で、これまでは5年を一区切りとして取り組んでいた、まちづくりや地域のつながりづくりといった各プロジェクトのノウハウをAIに学ばせ、これまでにありそうでなかった企業向けの従業員交流及びシェアリングサービスを国内外で拡散させていきたいと思っています。
――最後に、今ニュースとして特に発信したいことはありますか。
田中さん:最近は、共助コミュニティへの注目とニーズが劇的に高まっており、多くの自治体様や企業様からお問い合わせをいただくようになっています。一方で、弊社の社員採用が間に合っていません。創業以来、全社員がリモートワークで、全国のプロジェクトに奔走する少数精鋭で経営しています。関心がある方がいれば、是非とも弊社にご応募ください。新たなエリアでの共助コミュニティプロジェクトの始動などについては、弊社ホームページなどにも公開していますし、新たな地域でのプロジェクトも準備中だったりします。
「株式会社AsMama」を支援する方法
田中さん:是非、地域の担い手である「シェア・コンシェルジュ」にご応募ください。シェア・コンシェルジュは地域のお助けマン的な役割で、地域の人が喜びそうな情報発信や得意を活かした交流イベントの実施、または具体的サポートなどを担う人たちです。弊社でも積極的に活動を支援します。
また、共助コミュニティプロジェクトが実施されているエリア(奈良県三宅町/神奈川県横浜市/三重県鳥羽市/茨城県境町/広島県広島市南区/広島県広島市西区/神奈川県箱根町)内または周辺に在住・在勤の方は、是非「マイコミュ」アプリを登録して、まちの情報や、自分のできることや、不要なもので譲れるものやかせるものなどを投稿して欲しいです。
最後に、もしこの記事を読んでいる方が、自治体・企業等で地域課題の解決や、住人のファンづくりに関心がある役割を担っていたら、協働パートナーになっていただく、もしくはそのような自治体や企業をお繋ぎいただけるととても嬉しいです。
【問合せ先】https://asmama.jp/#contact