
社会課題解決の現場で働く方々からお話を伺い、その内容をインタビュー記事として発信するWebメディア「ソーシャルウォーカー(Social Walker)」。市⺠活動やソーシャルビジネスに焦点を当て、事業内容や背景にある社会課題、行政だけでは課題が解決されない理由などを独自インタビューを基に発信しています。
第15回目は、「NPO法人はみんぐアニマル」の代表である砂田 浩子さんにお話を伺いました。

動物の虐待や遺棄、災害時の救出など、様々な課題解決に取り組む動物愛護活動。その一つに、保護猫の愛護活動があります。 現在、団体が行う保護活動の8割は無償ボランティア1によって支えられており、猫たちを守る人々が多大な自己負担を強いられているのが実情です。 NPO法人はみんぐアニマルでは、こうした活動に取り組む人々の負担を軽減するサポートや、野良猫の無秩序な繁殖を防ぐための活動に取り組んでいます。
団体紹介

| 名称 | NPO法人はみんぐアニマル |
| 公式HP | https://www.instagram.com/humminganimal/ |
| 事務所所在地 | 岐阜県高山市西之一色町3-813-6 |
| 問合せ先 | h.1122.animal@gmail.com |
| 事業内容 | ・動物愛護活動の支援 ・生活困窮者・高齢者・障がい者等が、ペットとの生活を継続するための相談支援 |
今回お話を伺った人

砂田 浩子(すなだ ひろこ)さん
「NPO法人はみんぐアニマル」代表
「開放型保護猫シェルターにゃんliving」代表
「NPO法人すえひろ」理事
■プロフィール
岐阜県動物愛護推進員、岐阜県災害ボランティアコーディネーター、みちのく結心会、高山市民防災研究会、アニマルレスキューひだ、清流の国ぎふ防災・減災センター 未来塾6期生、高山市子供にやさしいまちづくり委員
――砂田さん、本日はどうぞよろしくお願いします。
砂田さん:よろしくお願いします。
猫と人の共生に向き合い、動物愛護活動者を支える
――はじめに、「NPO法人はみんぐアニマル」の活動概要・活動地域を教えていただけますか。
砂田さん:主な活動は、動物愛護活動に取り組む個人ボランティアや団体への支援です。
活動拠点は岐阜県高山市ですが、飛騨市・下呂市・郡上市・岐阜市など県内全域へ活動範囲が広がってきています。また、当法人の会員の中には愛知県に在住の方も居て、他県との繋がりもあります。
――動物愛護活動の支援について、具体的にはどのようなことをされていますか。
砂田さん:最も多いのは、保護猫や地域猫といった飼い主のいない猫をお世話している方へのフードや物資などの支援です。ペットフード版のフードロス対策にも取り組んでいて、企業やご家庭から余ったペットフード・用品を寄付していただき、会員登録済のボランティアさんたちにお渡ししています。ボランティア活動をされている方々の金銭負担を減らすことで、その分のお金を不妊・去勢手術代に回してもらえるようになりますし、品物をお渡しする際に猫の現状や困りごと等のヒアリングも行うことができます。 また、寄付していただいた物の一部はドネーション形式のバザーで販売し、得た収益を地域猫活動などに充てています。私たちは、単なる「野良猫」と、不妊・去勢手術を済ませて地域で一代限りの命が見守られる「地域猫」を明確に区別していて、野良猫を地域猫にするためのサポートも行っています。

――これまでの支援活動の中で、特に印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
砂田さん:特に印象に残っているのは、立ち上げ当初に行った、増えすぎた外猫への支援活動です。事業を始める際、当法人の活動を新聞に掲載していただいたところ、記事を見た方がご友人を数人連れて事務所にいらっしゃいました。最初は、「タダで何とかしてもらえるなんて、本当にそんな話があるのか?後から高額な費用を請求されるのでは?」と、私たちのことをかなり疑っておられるようでしたが、誠意を持って支援内容を説明し、改めてご相談を受けたところ、「隣人が置き去りにした猫に餌をあげていたらどんどん繁殖し、気づいたら30匹以上に増えてしまった。見捨てるわけにもいかないが、近隣住民からの苦情もあって困っている」とのお話でした。そこで、私たちは2日間かけて35匹すべての猫を捕獲器で地道に捕獲し、移動式の手術バスを手配して一斉に不妊・去勢手術を行いました。その後、近隣の方へ状況を説明し、ご理解をいただくサポートも行いました。
このように、動物への優しさから始めた行為が、いつの間にか地域での迷惑行為に繋がってしまう事例は少なくありません。結果として、優しさを持った人が傷つき、追い詰められてしまうことになります。そのため、猫への直接的な働きかけに加え、地域のご理解をいただく手助けを行うことも、私たちの活動の一環となっています。
もう一つ、家の中での多頭飼育崩壊現場も深刻で、強く印象に残っています。室内には大量のペットボトルが積み上げられ、まるでゴミ屋敷のような状態で猫たちが飼育されていて…。驚いたことに、飼い主さん本人は「猫の運動のために」と、良かれと思ってやっているそうで、結果として虐待に近い状態になってしまっていることに気づいていらっしゃらなかったのです。そうした方に対しては、正面から否定せず、 猫への愛情をお持ちであることは十分に理解した上で、「こうしてあげたほうが、猫たちも喜びますよ」と寄り添い、少しずつ良い方向へ導けるよう支援を行っています。
――動物に対して何かするよりも、人とのバランスをうまく取るのが難しそうですね。
砂田さん:はい。もちろん動物にも捕獲が難しいなどありますが、やはり一番難しいのは人との向き合い方ですね。私たちの活動は「動物のため」と思われがちですが、実際はその状況に“困っている人”が居るから、支援を行っています。本質的には「人のため」の活動なのです。
よく「不妊・去勢手術は人間のエゴだ」と言われることもあるのですが、だからといって増えすぎた猫たちが交通事故に遭ったり、殺処分されたりするのが幸せかというと、決してそうではありませんよね。保護できる数にも限界がありますので、私たちとしてはまず繁殖を抑えることで“蛇口”を閉めることが大切だと考えています。
皮肉な話ですが、4年ほど活動を続けていて、猫が居なくなった地域の方から「今度はネズミが出るから猫を戻して欲しい」という相談が入ったこともありました。 人の都合に振り回されてしまうこともありますが、そういう時こそ「猫たちの幸せは何か」という視点を忘れずに、一つ一つの活動に取り組んでいます。
――事業を立ち上げるきっかけとなった原体験はございますか。
砂田さん:岐阜県飛騨地区を中心に動物愛護活動に取り組む『アニマルレスキュー飛騨』という非営利団体への加盟を機に、動物愛護活動に取り組むようになり、その中で必要性を感じたことが、今の事業を立ち上げたきっかけです。以前私は福島県浪江町に住んでいて、東日本大震災で被災し高山に避難をしてきたのですが、被災時の緊急避難で一緒に暮らしていた犬と猫を置き去りにせざるを得ない状況になり…。その際に助けてくださったのが、動物愛護団体の方々でした。その経験から、私も動物愛護活動に貢献したいという想いがあり、高山にあったアニマルレスキュー飛騨の一員になりました。
アニマルレスキュー飛騨の一員として活動をする中で、譲渡されなかった保護猫たちをボランティアスタッフが自宅で保護している状況を知り、様々なリスクを考慮しシェルターがあった方が良いと考え『開放型保護猫シェルターにゃんliving』を作ったのです。すると、困りごとを抱えて相談にいらっしゃる方がたくさん居たので、それならもう一つ団体を作って支援をしていこうと、当法人を立ち上げるに至りました。
「人の問題」とは認識されない、野良猫・保護猫の問題
――活動の背景には、どのような社会課題が挙げられますか。
砂田さん:一つ目は、野良猫の数が多いことですね。2024年の推定数は、全国で約100〜200万頭とされています2。 最近は「TNR」(捕獲し(Trap)、不妊・去勢手術を行い(Neuter)、自然に返す(Retrun))という言葉が広く認知され、近年状況は改善されてきました。しかし、外飼い文化が残る田舎では未だに課題が多く残っています。TNRの目的は、無計画な繁殖による野良猫の増加を防ぎ、猫と人が共存できる環境を作ることです。しかし、手術可能な場所が少ない点や、生殖機能を奪うことへの是非、メス猫については手術済みの証として耳先をカットする通称“さくら耳”について「かわいそう」という声が寄せられる等、一筋縄ではいかない面があります。
二つ目は、「保護する猫の数」と「引き取られる猫の数」が倍以上異なることです。保護猫のうち半数以上は飼い主が見つからず、愛護活動に取り組むボランティアの人々が終生飼養するという形で抱え込んでいく現状があります。最近は「地域猫活動」によって抱え込みが減っているところもありますが、ボランティアの人々の自己犠牲によって愛護活動が続いている状況はまだまだ見受けられます。
三つ目に、冒頭でお話したような「飼育崩壊」の問題です。不適切な飼育環境の放置は、近隣住民とのトラブル原因にもなりますし、そこで過ごす動物にとっても良くありません。適正な飼育管理を知ってもらうことはもちろん、飼育崩壊に至る方の中には飼い主自身が何らかの支援を必要としているケースもあるので、そこへのアプローチも課題の一つだと考えています。
――これまで猫のお話を伺ってきましたが、犬についても問題があるのでしょうか。
砂田さん:私たちの活動地域(岐阜県高山市・飛騨市・下呂市・郡上市・岐阜市等)では圧倒的に猫の問題が多いです。考えられる理由の一つとして、犬には行政への届出制度があり、登録後はきちんと観察されます。また、保健所に入る犬の場合は、すぐに次の貰い手が見つかることが多いです。私たちが犬に関して行っている支援で言うと、地域住民の中に保護犬を飼いたいという人が居れば、別の団体と繋がり、譲渡手続きを代行するということはよくあります。
――課題の解決にあたり、行政だけでなくNPOなど民間の力が必要になるのはなぜでしょうか。
砂田さん:極端に言うと、行政としては「人の問題」ではなく「動物の問題」だと捉えているからではないでしょうか。現在は岐阜県も“殺処分ゼロ”に向けて動いていて、保健所も譲渡へ繋げる施設に変わりつつあります。 子猫に関しても、以前は保護されて持ち込まれても職員の就業時間内で面倒をみきれないので、その日のうちに殺処分されていましたが、一昨年辺りから民間で「ミルクボランティア」を募り、ミルクと子猫を渡して育ててもらうようになりました。ある程度育ち、人慣れしている猫であれば、動物愛護センターで里親探しをするという活動が増えてきています。しかし、県内の動物愛護センターは一カ所と限られているため、引き取り手が見つからなかった場合は、結局ボランティアが引き出して面倒をみることが当たり前になっています。本当に困っているのは、ボランティア活動をしている“人”なんですよね。そこを行政が「人の福祉問題」として捉えてくれるようになれば対応は変わってくると思うのですが、まだその段階には至っていないのが現状です。
活動する上で最も大切なのは、猫と人それぞれの幸せに寄り添うこと
――活動をする上で最も大切にしていることは何でしょうか。
砂田さん:「猫にとっての幸せ」と「人にとっての幸せ」を一番大切に考え、活動しています。私たちからしてみれば「こんなに酷いところで…」と思っても、動物や誰かにとってはベストな状況であるなど、現場は様々です。何が幸せかはそれぞれに異なるので、それを踏まえた上で「一体なにが最善だろう」と考え支援することを、毎回心掛けています。
――今後の活動方針や新しく取り組みたいことなど、具体的な展望がありましたらお教えください。
砂田さん:今後は、「動物の福祉」と「人の福祉」をより近づけた活動に取り組んでいきたいと考えています。具体的には、2026年4月を目標に、私が代表を務めている『開放型保護猫シェルターにゃんliving』を、当法人の一部としてB 型事業所(就労支援事業所)に変えていく予定です。保護猫シェルターと就労支援事業の組み合わせは、全国的には例があるものの、私たちの活動地域ではおそらく初の取り組みです。障がいなどで人とのコミュニケーションが苦手な方でも、会話が要らない猫とのコミュニケーションで癒やされたり、猫との触れ合いを通して人とのコミュニケーションにも自然と前向きになれる場合もあります。また、法人として人への福祉事業に取り組むことで、社会的信用が高まり、地域の人が困りごとを相談しやすい環境に繋がるのではないかと考えています。
私たちの最終目標は「次世代が苦労しない動物愛護活動」にしていくことです。今の活動は基本的にボランティアで行っていて、携わるメンバーが多くの時間を犠牲にして成り立っています。もちろん各々が自発的に望んで活動していますが、自分の生活もあります。「大切な活動だから」と、そのまま過酷なバトンを次の世代に渡すことはしたくないと思っています。NPOが収益事業を行うことに対して一部では批判的な意見もありますが、無理をせず継続的な活動を行っていくためには、 収益を上げることも必要だと考えています。
――最後に、今ニュースとして発信したいことはありますか。
砂田さん:今年度から、生活困窮者や高齢者へのペット支援も始めました。生活困窮者や高齢者の中には、多頭飼育崩壊してしまうケースが多くみられます。今までは状況が悪化し、どうにもならなくなってから相談が来ることがほとんどでした。そうした状況を未然に防げるよう、人の福祉に携わってる方々と協力し、動物の福祉と一緒に取り組んでいます。
動物愛護活動は動物のための支援と思われがちですが、その背景には様々な問題を抱えた“人”の存在があります。私たちの活動が、動物だけのためではなく、人への支援にも繋がっていることを知っていただけたら嬉しく思います。
「NPO法人はみんぐアニマル」を支援する方法
砂田さん:寄付金のご支援や、ボランティアのご協力をお願いできますと大変助かります。
また、ペットフードやペット用品の受付も行っておりますので、使わないものがあればお送りいただけると嬉しいです。フードについては、賞味期限内のものでお願いいたします。お品物をお送りいただく際は、元払いでお願いできますと幸いです。
【問合せ先】h.1122.animal@gmail.com