前回のコラムでは母子家庭における貧困の実態についてみていきましたが、今回はシングルマザーが貧困に陥りやすいのはなぜか、その実情をみていきたいと思います。
また、どんな支援が必要とされているのか、シングルマザーを支援している団体についても前回に続き追加紹介していきますので、支援先選びの参考にお役立ていただければ幸いです。
シングルマザーは貧困になぜ陥りやすいのか
前回のコラムで詳しくお伝えしましたが、シングルマザーの貧困は平均年収が低いことにより深刻な状況を招いています。
相対的貧困家庭の中でも割合の多い「ひとり親家庭」ですが、同じひとり親家庭であっても父子家庭の平均年収は420万円、母子家庭の平均年収は243万円と、シングルマザーの方が圧倒的に収入の低い傾向にあります。
加えてコロナ禍では、収入の減少や物価の高騰も重なり、一層苦しい状況に置かれています。
シングルマザーが貧困に陥りやすい背景は “非正規雇用”
シングルマザーの貧困が厳しい状況となっている背景には、非正規雇用者であることが挙げられます。
シングルマザーとなる女性には、結婚や妊娠・出産を機に仕事を辞めたり、パートタイマーとなったりしている人も多くいます。その状態から、子どもを抱えて正規雇用に就くことは簡単なことではありません。また、子どもがまだ小さい場合には子どもとの時間を大切にしたいことからフルタイム労働を希望していないケースも多いようです(参考:『平成28年度 (2016)子供の貧困に関する新たな指標の開発に向けた調査研究 報告書』 > 第3章 2.2.(9)保護者の就労状態)。
少し古いデータではありますが、厚生労働省が2016年11月に実施した『全国ひとり親世帯等調査』により、パート・アルバイト等の非正規雇用で働いているシングルマザーの割合は4割以上であることが分かっています。
※552÷1,244=0.44=4割以上
出所:厚生労働省『平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告』(P.5)
また、非正規雇用のシングルマザーが苦しい状況に置かれていることは、シングルマザーを支援する団体である「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」が今年3月に実施したアンケート調査からも、その実態が明らかになりました。
◆ ポイントまとめ ◆
・アンケート回答者(=食糧支援を受けた家庭)の99%が母子家庭
・アンケート回答者の67.7%が非正規雇用であり、その殆どの給与形態は時給/日給
・アンケート回答者のうち、非正規雇用者の2月の平均月収は11.7万円
・アンケート回答者のうち「⼦どもの通う学校や預け先が休みになったため、仕事に影響がでた」が約4割(39.3%)
雇用調整以外でも、子どもの休園/休校で仕事に行けないことが収入減少の要因に
出所:長期化するコロナ禍におけるひとり親の就労・生活調査『第6波による影響―働けず減収・進学困難』
シングルマザーの貧困に支援を
前回のコラムでもお伝えしましたが、貧困問題を抱えているシングルマザーには支援の手が必要です。
今年に入りコロナ規制が解除されて以降の、母子家庭の現状を示す資料は今のところ見当たりませんが、少なくともコロナ以前より良い状況になっているとは考えにくく、引き続き多くの支援が必要であると推察されます。
シングルマザーを支援したいと思った時、私たちがすぐに行えることの一つに、支援団体へのお金の寄付があります。日本国内にはシングルマザーの支援を行っている団体が多数存在します。お金の寄付は団体にとって使い勝手が良く、有用性の高い支援といえます。
現在はクレジットカード決済で支援金を寄付できる団体もあり、金額に関してもまとまった額ではなく、団体によっては1,000円程度から行うことが可能です。
シングルマザーを支援している団体
シングルマザーを支援している団体について、前回のコラムで『認定NPO法人 しんぐるまざあず・ふぉーらむ』『一般社団法人 日本シングルマザー支援協会』『一般社団法人ひとり親支援協会』の3団体をご紹介しましたが、今回新たに4つの支援団体をご紹介します。
■一般社団法人ハートフルファミリー
HP:https://www.hf-f.com/
◎ひとり親家庭のための情報サイト『ハートフルバンク』も運営中◎
“ハートフルファミリーではひとり親家庭の抱えた多くの問題の解決策の一つが“安定した仕事を得ること” “頑張りが結果に反映されるやりがいのある仕事”だと考えています。
社会全体が助け合い、思いやりを持つ日本家族社会を実現していく事だと考えます。―公式HPより
《寄付の用途》
・ひとり親家庭が抱える様々な課題を解決
⇒詳しくはこちらの寄付ページをご覧ください。
■NPO法人リトルワンズ
HP:https://npolittleones.com/
“NPO法人リトルワンズは、都内を中心にシングルママ・パパのサポートをしている団体です。
2010年にNPO法人化してから、毎月のイベント、交流会をはじめ、シングルママとお子さんの生活に関わることを応援しています。―公式HPより
《寄付の用途》
・子ども支援(学習、生活)
⇒詳しくはこちらの寄付ページをご覧ください。
■NPO法人ハッピーマム
HP:https://happymam.net/
“ハッピーマムは、生活に不安や悩みを抱えるひとり親とその子ども達に、食材支援・相談支援・コミュニティ創りを行うことで、ひとり親とその子ども達が夢や希望を持って健やかに暮らすことのできる元気な社会の実現に寄与することを目的としています。―公式HPより
《寄付の用途》
・ひとり親家庭に届ける食材購入費用
・ひとり親さんに時給2,000円の雇用を創出するための活動
⇒詳しくはこちらの寄付ページをご覧ください。
■子育てネットワーク・ピッコロ
HP:https://www.piccolonet.org/
“目的:年齢・性別や障がいにかかわらず地域に暮らすさまざまな人々を対象に事業を行い、地域と家庭とのネットワーク化を進め、子育てが楽しいと思える環境づくり、地域で支え合う子育て支援に寄与すること―公式HPより
《寄付の用途》
・低価格で安心して利用できる保育サービスの提供など
⇒詳しくはこちらの寄付ページをご覧ください。
さいごに
今回のコラムでは、シングルマザーの貧困はなぜ苦しい状況にあるのか、その背景にある収入格差の問題、その要因として非正規労働者の割合が高いことが挙げられることをお伝えしていきました。
この課題を解決していくための支援としては、やはりシングルマザーの正規雇用者を増やすなどの自立支援といった根本的な解決支援が重要です。もちろん、緊急支援として食糧支援や物資支援も必要ではありますが、対症療法的で一時的な解決にしかなりません。食糧支援・物資支援よりも、自立支援に繋がる活動を支えていくことが一層大切であると考えます。
行政でもシングルマザーの支援は行われていますが、それだけでは解決できない事象に対し、全国にはシングルマザーをサポートする民間の支援団体が多数存在しています。
そんな支援団体はそれぞれが明確なビジョンを持ち日々精力的に活動を行っていますが、その多くが資金不足に悩まされている現状があります。支援のために尽力したいという強い意志と行動力があっても、資金不足により継続した活動の維持が困難なことや、解決できない事柄もあります。そんな時に力となるのが、人々から集まる“寄付”です。
NHK大河ドラマ「青天を衝け」や新しい1万円札の肖像画に選ばれたことでも話題となった渋沢栄一の残した言葉に「しずくの一滴一滴がやがて大河になる」という有名な言葉がありますが、これは“一個人の力やお金では成し遂げられない大きなことも、みんなで少しずつ協力すれば成し遂げることができる”ことを意味しています。
私たちの誰もが社会を構成している一員であり、全ての人に社会を変えていく力があります。例えば100円の寄付でも、その小さな行動が少しずつ、けれど確実に社会を変えます。
日常生活を過ごす中では忘れてしまいがちかもしれませんが、自然災害による被災など、支援を必要とする立場になる可能性は誰にでも等しくあります。
願わくは、私たち一人一人が社会課題について当事者意識を持ち、互いに支えあっていける社会でありますように。