メンタルヘルスケア-セルフケアの方法は?相談窓口やNPO団体もご紹介

メンタルヘルスケア-セルフケアの方法は?相談窓口やNPO団体もご紹介

社会課題のひとつである「高ストレス型社会」をテーマに、前回、前々回のコラムでは、ストレスの基礎的知識ストレスが引き起こす心身の症状についてまとめてきました。

今回のコラムでは、ストレスに対して個人が具体的に行える行動として、実践的なストレスケア(メンタルヘルスケア)の方法、ストレスを抱えた際に頼ることができる行政の相談窓口、メンタルヘルス対策に取り組むNPO団体についてご紹介していきたいと思います。

メンタルヘルスケア-セルフケアの方法

ストレスによりメンタルヘルスの不調を感じた際どのようにケアをしていくのか、その方法は様々ありますが、今回はWHOが作成している『ストレスを感じたらやるべきこと:イラストガイド』から、5つのやることをご紹介したいと思います。
 

□ フックはずし
負の感情にかかっている”フック”を上手く外し、目の前のことに集中すること。
考えや感情との闘いをやめるための方法の一つ。
※詳細は後述します。

□ グラウンディング
地に足をつけ、周囲の世界に気がつくこと。
※詳細は後述します。

□ 価値に沿って行動する
自分が大切にしたい価値を見つけて、その価値に沿って小さなこと(難しいと思わない範囲のこと)から行動に移す。
※ここで言う“価値”とは、自分が「どのような人間でありたいか」という軸のこと。

□ 優しくあること
自分に思いやりを持ち、優しく話しかける。

自分に優しくすることで、周りの人にも優しくできるようになります。

□ 場所作り
負の感情を無理に押し出さず、自分の中に感情の置き場をつくる。

私たちの考えや感情は天気のようなもので、穏やかな時もあれば荒れる時もあります。
悪天候であっても空が傷ついたり、害を受けたりすることがないのと同じように、負の考えや感情にも傷つくことなく、そのための場所を自分の中に用意することがストレスを受け入れる方法の一つとなります。

 

“フックはずし”詳細

「負の感情にかかっているフックを上手く外し、目の前のことに集中すること」と紹介しましたが、人はストレスを抱えると苦しい考えや感情に“フック”されてしまい、何をしていても負の感情に引っ張られるようになります。
そしてフックからは簡単に逃げることが出来ず、何度もフックされ、「こんな自分でありたい」という本来の自分から引き離される結果に。そうなると、他者への思いやりが持てなくなったり、他人を責めたり、自分自身に否定的になってしまい、他人との衝突や家族・友人と距離を置くことになったり、1日中ベッドで過ごすことになったりしてしまいます。
 
フックから解放される方法は、一つの物事にコミット(集中)することで、全ての注意をそこに向ける方法を学び、フックされない状態を作ってストレスをうまくコントロールできるようにしていくことです。
例えば、趣味や何か楽しいことに没頭する、家事や人との会話に意識を集中してみる。また、誰でも簡単に行える「飲むエクササイズ」というものも『ストレスを感じたらやるべきこと:イラストガイド』で紹介されています。

出所:WHO『ストレスを感じたらやるべきこと:イラストガイド』(P.30-31)

「正しいフック外しの方法=負の感情を無理やり消すこと」ではありません。負の感情とは、うまく付き合っていくことが大切です。
考えや感情がフックされていることに気がつき、フックしている考えを書き出してみる。そして、それに名前を付け、フックされていることを自覚して目の前のことに再び集中する。この手順を繰り返し練習していくことで、フック外しを習得できるようになっていきます。

 

“グラウンディング”詳細

負の感情が強い時には、“グラウンディング”という方法もあります。
グラウンディングとは、自分が何を考え、どのように感じているのか気づくことで、不安定な状態から地に足をつけ、周りの世界に気づくことです。
負の感情以外にも、聴いたり、触ったり、味わったり、香りを嗅いだり、手や足を動かすことで周囲の世界にふれ、周りの世界に気づくことで自ら価値に沿って行動することができる、ということを再認識します。そのためのエクササイズ方法はこちらです。



出所:WHO『ストレスを感じたらやるべきこと:イラストガイド』(P.38-40)

『ストレスを感じたらやるべきこと:イラストガイド』では、他のエクササイズ方法も紹介されているので、ぜひチェックしてみてください。
「フック外し」や「グラウンディング」のエクササイズは、苦しい考えや感情を全て取り除くわけではありません。負の感情に支配されずに自分の人生にコミットするために必要なスキルで、練習するほど身につきます。1〜2分の短い練習から、5〜10分の長い練習を繰り返すことが大切です。
ストレスを感じることに対して、「変えられるものは変えていく。変えられないものは受け入れる。可能な限りで、自分の価値に沿って生きていく。」こうした対応が、ストレスケアの一つのポイントになっていきます。

行政のメンタルヘルス相談窓口

メンタルヘルス対策に行政も取り組んでおり、相談窓口を設けています。
一例として、東京都では『東京都こころといのちのほっとナビ(東京都福祉保健局)』を開設しており、自分が住んでいる地域の相談窓口(NPO団体など)を見つけることができます。

また、住んでいる地域に関係なく相談することができる相談ダイヤルも設置されていますし、「電話では相談しづらい…」という場合にはLINEを利用して相談することも可能です。

さらに、「人に話すのは抵抗感がある…」といった場合にはAIチャットボット(無人チャット)『こころコンディショナー』で相談することもできます。利用登録時の基本情報入力は、ニックネーム・年齢・性別のみでしたので、気軽に利用できるのではないでしょうか。

相談窓口を利用することで心が軽くなることや、気持ちが整理できることもあると思います。身近な人には打ち明けにくいことでも、全く関わりの無い人なら話しやすいかもしれません。また、人と直接関わりたくない場合にはAIに相談することもできる時代です。

このような存在があることを知っておき、ストレスを抱えたり、心に不調を感じたりする時には、改善する手段の一つとして利用してみてはいかがでしょうか。

メンタルヘルス対策に取り組むNPO法人

行政だけでは対処しきれないメンタルヘルス対策に取り組んでいる民間組織もあります。
今回は一例として、『NPO法人Light Ring.』をご紹介したいと思います。

 
■ NPO法人Light Ring.

公式HP:https://lightring.or.jp/kokoro/

 
Light Ring.は、20代の死因のおよそ50%が自殺という現状を踏まえ、若者の心の病の予防に取り組んでいる団体です。
メンタルヘルスの社会課題を解決するために、“①健康状態の人がこころの病予備軍となるのを防ぐこと ②こころの病予備軍の発病を防ぐこと”を一次予防と設定し、このような状態を保てることを目標に事業の展開がなされています。

出所:公式HP-Light Ring.の役割とは

カウンセリングや投薬治療については様々な対応策が考えられている中、予防策が講じられることは不足していると考え、周囲の異変に気付くことやセルフケアができるよう中高大学で10代向けのゲートキーパー育成事業を行ったり、悩みを抱え孤立化しやすいゲートキーパー同士が支えあえるコミュニティ構築事業を行ったりしています。
※ゲートキーパー:自殺のリスクに繋がるような悩みに気づき、声をかけたり話を聞くなどして必要な支援へと繋げていく「見守る人」のこと。

また、活動の背景にあるメンタルヘルスの社会問題について、こころの病による社会的(経済的)な損失についてもHP内では紹介されています。人々のメンタルヘルス不調をケアしないことは、生産性を低下させ、医療費が増加するなど、社会が成長していく上での妨げに繋がっていくというわけです。
問題が解決されない原因としては”①病気自体の問題 ②予防の活動がされていない ③国の管轄権限が不明確であること”が挙げられていました(詳しくはこちら)が、Light Ring.では問題解決に向け、民間組織として10年間に渡り多方面に活動の輪を広げています。

こころの健康を損なうことは自然な出来事で、誰にでも起こり得ることです。決して他人事ではありません。一人一人がメンタルヘルスへの理解を深めることはもちろん、Light Ring.のようにメンタルヘルス対策に取り組む団体の活動に参加することや、寄付といった形で活動を支えることは、メンタルヘルスの社会課題を早期解決していくことに繋がっていくと思います。

Light Ring.では寄付の募集も行われており、継続寄付は一口1,000円〜/月、都度寄付では自由な金額での支援が可能です。手続きは、銀行振り込みの他、クレジットカード決済での申し込みができます。
ご興味を持たれた方は、ぜひ一度公式サイトの寄付募集ページにて詳細をご確認ください。

さいごに

日本では、我慢を美徳とする考えが未だ根強くあるように感じることがあります。しかし、可視化することのできない「心」の健康について考えた際、状態の悪化を的確に把握することは難しいので、不調を我慢し続けることはとても危険だと思います。人の心は目で見ることができませんが、確かに存在し、時に人を死に追い込むことだってあるからです。

社会全体でメンタルヘルスについての知識を共有し、予防や迅速な対処に私たち一人一人が取り組めるようになれば、メンタルヘルスの社会課題は解決に向かうと思います。また、ストレスと密接な関係にあるメンタルヘルスの問題を解決していくことは、高ストレス型社会という社会課題を解決することにも繋がっていくのではないでしょうか。
一刻も早く、そのような社会が実現されることを願ってやみません。今回のコラムが、その一助となれば幸いです。

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